前回は、「損益分岐点売上高を算出(変動費と固定費)−その2」で、
・損益計算書を変動損益計算書に書きなおすには
・変動損益計算書から損益分岐点の求め方
と言う内容をお伝えしました。
今回は、
・損益分岐点売上高の公式を用いた例題
・損益分岐点グラフ
・計画利益を達成するための必要売上高の求め方
と言う内容をお伝えしたいと思っています。
早速、次の表を使って、実際に損益分岐点売上高を求めて見ましょう。

さらにこの表を分かり易く要約して見ましょう。

要約変動損益計算書の数値と
損益分岐点売上高=
固定費÷(1−(変動費÷売上高))
▼
損益分岐点売上高=
固定費÷(1−変動比率)
の公式から算出します。
(今後単位は千円)
先ず、ABC株式会社の場合
変動比率=変動費÷売上高ですから
=36,000÷100,000
=36%
=0.36
となります。
損益分岐点売上高は
固定費 60,000
変動比率 0.36
この二つだけ分かれば、計算できますよ。
早速計算してみます。
損益分岐点売上高=固定費÷(1−変動比率)
=60,000÷(1−0.36)
=60,000÷0.64
=93,750
ABC株式会社の損益分岐点売上高は、93,750です。
次は、ABC株式会社損益分岐点グラフをご覧ください。

0から右上に伸びる青い斜め直線が売上高線
縦軸60,000で横に平行に引かれた茶の直線が固定費線
縦軸60,000から右上に伸びる緑の斜め直線が総費用線
【総費用から固定費の60,000を引けば変動費になる】
【また、総費用線の傾きが変動比率となる】
売上高線と総費用線の交わるところが、損益分岐点です。
当然、
交点より売上が低ければ赤字。
交点より売上が高ければ黒字。
このグラフを見れば、
固定費は、売上高の増減に関係なく、一定に発生する費用であり、
変動費は、売上高の増減に応じて、増減する費用であることが、
容易にお分かりいただけると思います。
さて、ABC株式会社の変動費は、
固定費が一定なら、売上が1増えると変動費は0.36の割合で
増えることはすでにご理解いただけたと思います。
ここで、
限界利益=売上高−変動費ですから
限界利益の増分=売上高の増分−変動費の増分
といことになり、
売上が10,000増えると変動費は3,600増えることになります。
つまり、
限界利益の増分=10,000−3,600
= 6,400
そして、
限界利益率=1−変動比率
と表すことができます。
ABC株式会社の限界利益率は、
限界利益率=1−0.36
=0.64となります。
この会社の場合、
変動比率が一定で、固定費が変わらなければ
増分売上の64%が利益になります。
損益計算書で見るとABC株式会社の売上総利益率は35%ですが、
変動損益計算書ではABC株式会社の限界利益率は64%となります。
社長さんの中には、売上が増えれば、粗利益率の分だけ利益が増えると
勘違いしている方もおられるようです。
売上総利益率だけを見ていると、経営戦略を誤ることに気がつきます。
今度は、計画利益を達成するための必要売上高の求め方です。
ここまで来るともう簡単です。
損益分岐点売上高=固定費÷(1−(変動費÷売上高))
▼
損益分岐点売上高=固定費÷(1−変動比率)
ですから
計画利益を達成するための必要売上高は
必要売上高=(計画利益+固定費)÷(1−変動比率)
で求めることができます。
ABC株式会社の当期の経常利益は、4,000でした。
当初計画利益が4,000であったとして、必要売上高を求めて見ましょう。
必要売上高=(計画利益+固定費)÷(1−変動比率)
=(4,000+60,000)÷(1−0.36)
=64,000÷0.64
=100,000
となり、一致しましたね。
それでは、ABC株式会社が、変動比率が一定で、固定費が変わらなければ
来期、10,000の利益を獲得するための必要売上高は
必要売上高=(計画利益+固定費)÷(1−変動比率)
=(10,000+60,000)÷(1−0.36)
=70,000÷0.64
=109,375
となります。
前期利益に比べ
6,000増の利益を獲得するのに必要な増分売上は
=109,375−100,000
=9,375
だけで良いことになります。
ちなみに
(増分利益6,000)÷(増分売上9,375)=0.64=64%
ABC株式会社の限界利益率=1−0.36=0.64=64%
これも、一致しました。
経営計画では、年度予算も作成しますが、変動損益計算書から、
必要な利益と、概略の変動費、固定費、そして必要な売上高を求めることが
予算作成の入口になります。
変動損益計算書や損益分岐点計算式は、まだまだいろいろな使い方があります。
また、経営をシュミレーションするのに、大変役立つ優れモノです。
取りあえず、毎月の試算表が確定したら、エクセルを使って損益計算書を
変動損益計算書に書き換えて見たらどうでしょうか。
毎月、時系列に作成しておけば一年の実績が一覧でき、とても便利ですよ。
損益分岐点グラフも、エクセルのグラフ機能を使えば簡単に作成できます。
(上記グラフも朴念仁が、エクセルで作成したものです)
何か、算数も多く、読みにくい記事が三回も続いてしまいました。
でも、覚えてしまえば簡単ですし、社長さんの経営の一助になればと思います。
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で社長さんの会社の儲けの理由を明らかにしましょう。