ロンドン生まれの航空エンジニア、ランチェスターは、
空中戦闘における、
戦闘機の数と損害量の間に、ひとつの法則があることを発見した人です。
これが、ランチェスターの第一法則・第二法則と言うものです。
第二次世界大戦の時、アメリカ軍は第一法則・第二法則をもとに、
「ランチェスター戦略モデル式」を確立し、
この戦略モデル式を軍事戦略に活用し、第二次世界大戦に勝利した訳です。
さらに、この軍事戦略を日本でビジネス戦略として応用、体系化したのが、
故田岡信夫氏(1927〜1984年)です。
いわゆるこれが日本で言う「ランチェスター戦略」なんですね。
ごく簡単に
第一法則が適用されるのは、
・局地戦:互いの兵力数が確認できる狭い範囲
・原始兵器:1 回の攻撃で1 人が1 人しか攻撃できない単発兵器
・接近戦:至近距離での戦い
が条件で、
武器が同じならば、兵力数が多い方が必ず勝利することを意味している。
戦闘力=武器効率×兵力数
弱者でも、第一法則に持ち込めば、勝利することが可能です。
第二法則が適用されるのは、
・広域戦:広い範囲の戦場で戦う
・近代兵器:1回の攻撃で複数の敵を集中して攻撃できる兵器
・遠隔戦:敵と離れての戦い
となり、第二法則は、兵力数が二乗される。
武器が同じだとすれば、双方の損害量は兵力数の二乗の戦闘力の差となる。
つまり、兵力数の差が圧倒的な差を生むことを意味している。
戦闘力=武器性能×(兵力数×兵力数)
弱者は、この場合に全く勝利することはできません。
したがって、強者は第二法則により嵩にかかって攻撃してきます。
これを経営戦略に置き換えると
武器効率:商品力、技術力、サービス力、情報力、営業マンの資質、信用
兵力数:資金力、生産設備の量、生産拠点、営業マンの数、営業拠点
などとなる訳ですね。
ならば、武器効率が同じであっても、兵力数に圧倒的に劣る弱者=中小企業は
必然的に、第一法則のもとで戦う必要があると言う事になります。
第一法則により、局地戦・接近戦で戦うと言う事ですね。
一方強者=大企業は当然第二法則のもとで戦う必然があります。
ここで、ランチェスター戦略は、
強者とは一位だけ、弱者とは一位以外のすべて、と定義付けています。
さて、第一法則、第二法則、これをもう少し分かりやすい説明します。
そこで、こんな例えはいかがでしょうか?
織田信長が1575年の長篠の合戦で鉄砲隊を用い、
勝頼率いる武田軍に圧勝する以前、
日本の戦は刀・槍による接近戦による一騎打ちスタイルでした。
この場合、
兵力数に違いがあっても、両軍に同数の犠牲者が出るというのが、第一法則です。
一方、両軍がライフルのように射程距離の長い武器で離れて戦った場合、
両軍の戦闘力は兵力数の2乗×武器性能比となるのが、第二法則です。
1959年に始まったベトナム戦争の一戦闘シーンを再現します。
アメリカと北ベトナムの偵察小隊が、川を挟んで対峙し打ち合いとなりました。
アメリカ兵5人、北ベトナム兵3人とします。
この場合の戦闘力は第二法則により、
アメリカ軍の戦闘力 =5人×5人×1=25
北ベトナム軍の戦闘力=3人×3人×1=9
戦闘力格差は
25−9=16で、
生き残りの数は
アメリカ軍が√16=4人で損害は1人、北ベトナム軍が全滅と言う事になります。
現実のベトナム戦争は、北側がジャングルに潜み、
米軍の武器性能を無力化するゲリラ戦術をとったため、
長期化しアメリカの敗北となったのですが、
これこそ第一法則で戦った北ベトナム軍の見事な戦略であったといえます。
まあ、所詮これは戦闘の話だから、と言わないでください。
弱者でありながら、強者アメリカに屈しなかった戦略を
中小企業経営に置き換えたらどうなんだろうか、がランチェスター戦略の本旨ですから。
そして、中小企業がランチェスター第一法則の適用条件下
・局地戦:互いの兵力数が確認できる狭い範囲
・原始兵器:1 回の攻撃で1 人が1 人しか攻撃できない単発兵器
・接近戦:至近距離での戦い
とは、経営の場合にそれぞれどういう事なのかを、
自社の状況に置き換え、弱者の戦略として構築することで生き残りを掛ける。
こう言う事なのですから。
さてここで、経営において、
兵力は、量的経営資源
(資金力、生産設備の量、生産拠点、営業マンの数、営業拠点)
武器効率は、質的経営資源
(商品力、技術力、サービス力、情報力、営業マンの資質、信用)
でしたね。
中小企業は、量的経営資源において、大企業と比べる術もありません。
だから、大企業と真っ向から勝負する戦略は、弱者の戦略と言えない訳ですね。
少なくとも、質的経営資源において大企業と同等であるならば、
局地戦や接近戦、つまり、
競争する場所の選択や、顧客層の絞り込みで勝利することが可能です。
さらに、質的経営資源で、大企業や競合先より優れたものがあれば、
上記と組み合わせる(=複合戦略)ことで、
エクセレント・カンパニーも夢ではないのですよ。
この、より優れた経営資源の確立が「強み=弱者の差別化戦略」であり
コアコンピンタンス
(他社に真似できない技術、サービス、ノウハウなどの核となる能力)
USP
(Unique Selling Proposition、独自の売り)
を確立することで、
KFS(Key Factor for Success)=成功の鍵を見つけ出すのが
小さな会社=弱者の差別化戦略であると言う事なのです。
具体的で、詳細な内容、
あるいはどのように「弱者の経営戦略」を構築するのかについては、
順次、拙ブログに掲載していきたいと思います。
簡単管理会計の最速・最強ツール9+1【こちらから】
で社長さんの会社の儲けの理由を明らかにしましょう。
【関連する記事】
- ランチェスター戦略の落とし穴
- コアコンピタンスを活かして異業種に参入
- 選択と集中でシェア60%超
- 売上の意味(売上=???)
- 低価格戦略でも同じ利益を確保するためには
- 夢を実現するビジネスモデル
- 0円ビジネスはデフレに打ち勝つか
- 極小商圏に特化した戦略で零細がチャンス
- 経営戦略立案の最強ツールSWOT
- 経営戦略:選択・差別化・集中のカギとは
- 経営戦略:KFS=成功のカギとは
- 経営戦略:ドメインとコアコンピタンス
- 経営戦略の立案方法が分からない
- アサヒビール「スーパードライ」開発秘話
- 弱者の差別化戦略の大切な基本
- 「モスの差別化戦略とは何?」と突然の質問にビックリ!
- 儲からないのは場所と方法に原因があります
- 生き残りを掛けた弱者の経営戦略の必要性
- これが弱者の経営戦略の決定版−「スズキ」−
- 日本航空にもナンバーワン戦略があったのか!