今回は、昨日お約束した通り、
アサヒビール「スーパードライ」開発秘話
すなわちアサヒビール復活の、起死回生差別化戦略についてお話します。
その前に、日本のビール業界につての基本データをお示ししておきます。
(平成21年12月末時点)
業界売上規模:2兆9,421億円
売上高純利益率:+2.4%
前年比成長率:−4.3%

グラフの通り
売上規模は平成16年の3兆円から、
ほぼ横這い状態を続けています。
国内のビール、発泡酒の出荷量・販売量は、
やはり年々減少傾向に。
背景には消費者の節約志向による買い控えが進んでいるからでしょう。
一方で、低価格な第3のビールは、
伸び続け出荷数量で3割を超え、発泡酒を上回りました。
そんな中、各社は新商品を続々と投入。
カロリーオフ、糖質ゼロといった健康志向のビール
「キリンフリー」などのノンアルコールビール
など、各社は新商品を続々と投入し、シェア争いに躍起となっています。
余談ですが、朴念仁としてはノンアルコールビールなぞ、飲みたくありませが、
これも、一つの社会背景なのでしょう。
経営者は、
単に自己満足や、個人的趣味・嗜好で戦略を考えてはいけないのですね。
世の中の情勢・トレンドなど、普段からの情報分析が必要だと思うのです。
さて、
ビール会社売上高シェアは、平成21年12月末時点で
次のグラフのような結果になっています。
(スイマセン、直近の比較データまだありませんでした)

しかしながら、
2010年はビール、発泡酒、第3のビールの出荷量で
アサヒビールが37.5%
キリンビールが36.7%
僅差だが2年ぶりにキリンビールから首位を奪還しました。
特に、キリンとアサヒのトップ争いは熾烈なものがあります。
そう、2番ではダメなんですよ。
さて、話は本題に入ります。
朴念仁が中小企業家同友会に在籍中、支部例会の特別外部講師として、
アサヒのスーパードライ開発担当をお招きして、
お話しいただいた講演内容を、朴念仁なりに整理し、まとめたものです。
アサヒビールの差別化戦略−スーパードライ−
差別化戦略その1 消費者志向
かつては、
市場シェアでトップなったこともあるアサヒビールでしたが、
1984年には、市場シェア9.9%まで落ち込んでしまいました。
翌年、シェア回復のために
新しいCI(コーポレート・アイデンティティ)を設定。
その基本差別化戦略が
消費者志向=「消費者の求める商品を提供する」
まあ、これがアサヒ起死回生の復活の始まりとなる、基本理念だったのですね。
1991年バブル経済崩壊までは、
日本の産業構造は大量生産・大量消費システムが主流でした。
このシステムの下では、
企業が良いと考え出した商品を、消費者が選択して購買する
プロダクトアウトの発想が主流というか、それしかなかったと思います。
時代のキーワードは、
生産性向上・コストダウンで、大量生産。
すなわち、消費者志向なんて言う観点は、ほとんどなかったでしょう。
ここに、
アサヒは顧客満足を最優先する考えの下、
消費者志向の差別化戦略を打ち出したのですね。
今までは開発・製造部門が考えた商品を、
営業部門は売るだけという流れが、アサヒにおいても支配していました。
それでは、
アサヒは何をやったのか
→5000人の消費者志向調査
→営業部門の連夜の泊り込みの試飲
何が分かったのか
→消費者の好み
今までのビール会社が作り上げたイメージは、
キリンラガーに象徴される「重くて、苦い本格派のビールがうまい」
消費者の好みは何だったのか
「口に含んだ時の味わいと喉越しの快さ」
「コクとキレ」
ビール各社が今まで良いと考えていたものとは、全然違ったいたのですよ。
差別化戦略その2 新しいポジショニング
ビールの嗜好の変化は、
肉やピザなどの脂っこい食品を食べる機会が増えた、つまり、
日本人の食生活の変化によるところも大きかったんですね。
さらに、ポカリスエットとか酎ハイなど、
アッサリ感や、軽い飲み口を好む若者たちが、
ビールの嗜好の変化に拍車をかけることになりました。
アサヒは、この嗜好の変化を先取りしていた若年層やビジネスマンなどを
最初の市場ターゲットに、
ライバルと争うための自社のポジショニングを見つけたのです。
差別化戦略その3 新しいコンセプトによる商品の差別化
基本理念をベースに
「飲むほどにDRY、辛口、生」
「辛口、キレ、鮮度」
というキャッチコピーとともに、
「スーパードライ」がうまれたのは、皆さまご承知の通りです。
商品のコンセプトを表現するため、
広告には、現役ビジネスマンやスポーツマンを登場させ、
広告費も従来の2倍を投入しました。
パッケージも、缶を主体に開発されました。
なぜなら、キリンは
流通の系列化
ビンの回収による宅配
においてに強みを持っていたからです。
アサヒは
単身者
共稼ぎ
コンビニ
自動販売機
をキーワードに、缶ビールの普及を促進し、
スーパードライの爆発的ヒットとなったのです。
アサヒは、複合した差別化戦略により、キリンのミート戦略をかわし、
1998年、48年ぶりに見事にシェアトップの座を奪還し、
その後、アサヒVSキリンは激しいシェア争いをしていますね。
アサヒビールの弱者の差別化経営戦略は、
小さな会社の経営戦略を考える上で、十分に参考になるものでしょう。
「えっ、何がっ」てですか?
弱者は
・消費者志向に徹する
・過去の立ち位置にこだわらない
・自社の存在利用を明確にする商品
で市場に生かされる。
しつこく繰り返せば、
「人が望んでもいないものを売り続けるのは、自滅行為!市場からの撤退!」
と言うことですよね。
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で社長さんの会社の儲けの理由を明らかにしましょう。
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今日初めてこのプログのことを知りました。
これから少しずつ過去の記事をさかのぼって読んでいこうと思います。
これからも頑張ってください。
コメありがとうございます。
拙ブログが、少しでもお役にたてれば
こんな嬉しいことはありません。
これからも、よろしくお願いします。