以前「小さな会社のための簡単原価計算方法」などで
原価計算の基本や、簡単な原価計算方法について説明してきました。
その中で
製造または現場部門の、時間あたり作業単価=加工単価は
加工単価/時=(年間労務費+年間製造経費)÷製造部門年間総作業時間
販売管理部門の、時間あたり販売管理費割当単価は
販管費等割当単価/時=年間販売管理費など÷販管部門年間総作業時間
を求めなければならないということでした。
ここで、年間総作業時間とあるのは、年間実質作業時間のことです。
実質の作業時間を求めないと、合理的な原価計算を実行できません。
それでは、実質作業時間とは何なのか?
例えば、
製造部門の社員1人あたりの
1日あたり勤務時間8時間
年間の契約就業日数250日の場合
8時間×250日=2000時間が、1人あたり年間の総労働時間となります。
同様の社員が5人、製造部門に従事している場合
合計の年間の総労働時間2000時間×5人=10000時間が
製造部門の年間総労働時間となります。
この時、加工高(年間労務費+年間製造経費)が3000万円の場合
加工単価は
加工単価/時=(年間労務費+年間製造経費)÷製造部門年間総作業時間
で求めることができますから
加工単価/時=3000万円÷10000時間=3000円/時
とはならないのです。
年間の総労働時間のうち原価計算に含めてはいけない時間があるのです。
(1)1日の勤務時間から非作業時間をマイナスして有効作業時間を算出。

非作業時間とは
@朝礼や作業の打合せ時間
A全体清掃時間(機械等の洗浄時間は原価計算に含まれる時間)
B材料手配時間
C不良品手直し時間
D移動時間
E怠惰時間(休憩時間やサボっているいる時間)
などです。
(なお、休憩時間はあらかじめ所定勤務時間から差し引かれる場合もあります)
所定の勤務時間から、これら非作業時間をマイナスした有効作業時間が
原価計算に使用される時間となります。
有効作業時間=所定の勤務時間−非作業時間
(2)年間の所定勤務日数から非勤務日数をマイナスして有効勤務日数を算出。

非勤務日数とは
@有給休暇日数
A欠勤日数(遅刻・早退含む)
B不作業日数(出勤しても仕事がない、自然災害・天候などで作業できない日)
などです。
所定の勤務日数から、これら非勤務日数をマイナスした有効作業日数が
原価計算に使用される時間となります。
有効勤務日数=所定の勤務日数−非勤務日数
さて例えば、社員1人につき
1日あたり非作業時間が30分
年間の非勤務日数20日
とします。
有効作業時間
=所定の勤務時間−非作業時間
=8時間−30分=7時間30分
有効勤務日数
=所定の勤務日数−非勤務日数
=250日−20日=230日
年間実質作業時間
=有効作業時間×有効勤務日数×人数
=7.5時間×230日×5人
=1725時間×5人=8625時間
この結果から加工単価を算出することになります。
加工単価/時
=(年間労務費+年間製造経費)÷製造部門年間実質総作業時間
=3000万円÷8625時間
≒3478円となります。
非作業時間と非勤務日数を無視した加工単価は3000円でした。
この場合、478円(15.6%)加工単価が上昇したことになります。
結果をまとめると
年間の実質作業時間:8625時間
年間の非作業時間:1375時間
非作業時間率:13.75%
実質作業時間率:86.25%
加工単価(作業単価):3478円
となります。
このように原価計算を実行する場合
原価計算に含めてはいけない非作業時間と非勤務日数を減じた
有効な実質作業時間から、加工単価(作業単価)を求めることになります。
当然ですが
非作業時間(率)が高くなれば製品原価が上昇します。
また、非作業時間(率)を低下させることができれば、製品原価が減少します。
なお、非作業時間(率)の低下は
・生産性の向上につながり
・製品価格を低下させ
価格競争力が強くなることになります。
現実問題として非作業時間を正確に把握することはできません。
ですから、ここでもいつも申し上げている匙加減が必要です。
朴念仁の考えでは、
非作業時間は少し余分に算出したほうが良いかな、と思います。
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で社長さんの会社の儲けの理由を明らかにしましょう。
原価計算の仕事に携わっている齋藤と申します。
質問なのですが、加工単価を算出する場合の「製造部門年間総作業時間」にはどこまでの部門の作業時間を含めばいいでしょうか?
弊社の製造原価には、製造部(直接作業)、製造部生産管理係(間接)、品質管理部(間接)、営業部、製造部長、品質管理部副部長の経費が入っています。
販管費は、総務部、役員となっています。
非作業時間を短縮することで、製造部門の生産性向上に寄与できるのであれば、
その部門は製造部門と言えます。
しかし、生産性の向上は、直接作業に携わっていなくても、可能なのではないですか?
また、営業部は販売管理部門です。製造原価に含むのは適当ではありません。
したがって、損益計算書から部門訂正をする必要があるでしょう。