中小企業では弱者の差別化戦略は、選択と集中が大原則となります。
これなしで、存続・成長はあり得ないと言っても過言ではありません。
@ドメイン(市場や顧客層)=事業領域を絞り込み
Aコアコンピタンス(核となる他社に圧倒的な強み)による技術やサービスで
BKFS(成功要因)=儲けの理由を見出し
Cここに限られた資源(資金や人材など)を集中してつぎ込む
これが選択と集中による中小企業=弱者の差別化経営戦略です。
このためにはSWOT分析により
・自社の強みと弱み
・自社を取り巻く環境から機会と脅威
のなかからドメイン・コアコンピタンス・KFSを明らかにしていきます。
今回は選択と集中により
エクセレントカンパニーとして、業界で高いシェアを誇る会社を紹介したいと思います。
先ずは次の概略の財務状況をご覧ください。



(以上はこの会社のホームページより参照)
直近の決算では
売上高 :60億9200万円
粗利益 :26億9500万円(44.2%)
営業利益:60億円(9.8%)
経常利益:61億円
総資産 :72億 100万円
純資産 :58億4000万円(81.1%)
と言う状況になっています。
高い粗利益率と言えども、驚くほど高い営業利益率を出していません。
これは、お客様へのフォローを充実させるために
営業・サービス体制を強化している現れでしょう。
したがって販売管理費が高く、
営業利益率がそれほど高くなっていないものと思われます。
営業利益より経常利益が大きいのは、ほとんど無借金経営となっているのでしょう。
経常利益=営業利益+営業外収益−営業外損失となります。
営業外損失は借入金の利息などですから、支払利息負担がないのだと思います。
着実に利益を積み重ねた結果、純資産の総資産に対する比率は80%を超えています。
まさに、エクセレントカンパニーです。
さて、この中小企業は、
1961年に埼玉で創業した鈴茂器工(以下スズモ)と言う会社です。
鈴茂器工という会社をご存じでしたか。
食品を加工するロボットを製作している会社なのです。
何のロボットかと言ええば、あの「すしロボ」と言う名の
寿司のしゃりを自動で握ったり、巻きずしを自動でつくる食品ロボットなのです。
そして「すしロボ」のシェアの60%がスズモの「すしロボ」です。
回転ずしや、スーパー・コンビニで販売されている寿司は
この「すしロボ」がしゃりを握り、巻いているのです。
「すしロボ」のおかげで
職人がいなくても短時間に大量の寿司生産が可能になりました。
その恩恵で、私たちは安い寿司を食べることができるようなったのですね。
「すしロボ」の第1号機ST-77型寿司ロボットは1981年に開発されました。
その後、改良を重ね、バリエーションも増やし
今では寿司職人が握るような米粒のたったしゃりが握れるようになっています。
スズモは当初和菓子を自動で作る機械を製作・販売していました。
しかし、この分野では栃木県にあるレオンと言う会社が先駆者で
業界内においても高いシェアを誇り、スズモは完全に負け組でした。
「すしロボ」開発は、減反政策によるコメ余りが契機となったようです。
・米の消費量拡大に少しでも貢献しようとする使命感
・和菓子の自動加工機械では行きの残れないと言う危機感
・創業者のチャレンジ精神
が「すしロボ」を生んだのに違いありません。
もともと和菓子も米を素材にした商品が多く
米を加工するというスズモのコアコンピタンスが、寿司に活かされたのです。
コアコンピタンスとはそう言うものなのです。
スズモは、「すしロボ」に特化し現在ナンバーワン企業として存在しています。
海外売上高比率はまだ15%に過ぎず、世界の寿司需要を考えると
今後ますます躍進が期待されるのではないでしょうか。
選択と集中とは、
@他社がまだ参入していない事業領域に自社のコアコンピタンスをぶつける
Aそして、徹底して限られた資源をつぎ込んで行く
と言うことではないでしょうか。
そして社長のチャレンジ精神と使命感がこれを支え
やがて他社と差別化されたエクセレントカンパニーに育って行くのだと思います。
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で社長さんの会社の儲けの理由を明らかにしましょう。
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